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被災後の大船渡、釜石地区のがん治療の状況調査と今後の対応についての意見交換会 議事メモ(2011.04.21)

被災後の大船渡、釜石地区のがん治療の状況調査と今後の対応についての意見交換会 議事メモ(2011.04.21)

岩手県立大船渡病院

日時 平成23年4月21日(木)11:00~
場所 上記
参加者 八島 良幸先生(県立大船渡病院院長)、小山田 尚先生(県立大船渡病院)、石岡 千加史(東北大学腫瘍内科)、森 隆弘(東北大学がんセンター)

 平成23年4月21日(木)、午前7時30分に加齢医学研究所に集合、東北自動車道宮城インターから水沢インターに移動、一般道を経由して県立大船渡病院院に午前10時45分頃に到着。約1時間、同病院長室および化学療法センターで下記の議事内容の意見交換を行った。その前後に大船渡地区の被災現場を訪れ、被害状況の実際を確認した。

1. 大船渡地区のがん医療の現況

県立大船渡病院

 この地区の拠点病院であるため、この地区住民のほとんどの癌治療に関与している。特に消化器癌についてはほぼ全ての患者の治療を同病院の外科が行っている(化学療法)。震災時に治療継続中であった患者さんは97名、その後、震災による死亡/行方不明は計4名、その後、3名が原病死された。6名が化学療法を休止中(1名は社会的経済的理由より)、残りの84名は化学療法を継続している。病院の機能は損傷無く、ライフラインも早期に復旧されたため、3月23日から治療再開出来た。震災以降にも10名が化学療法を開始出来ている。これはほぼ通常通りのペース。病院機能自体の損傷は無かった(上記)こと、薬など支援があり、また、患者も基本的に自家用車などにより通院可能であったこともあり、スムーズに治療再開できたと考えられた。また、全国からのサポートチームによる救急医療の対応や避難所巡回が行われているため、同医常勤医は通常の診療に集中出来る環境が得られた。また、県内陸部の県立病院などが積極的に入院患者の受け入れを行ったため、空床を確保することが可能であったことも大きい。手術も震災前に比べ、やや少なめだが行われている。

陸前高田病院

 これまでは肺癌などに限定したがん薬物療法を行っていた。震災で病院自体が全壊した。患者は内陸の病院に転送された。

2. 大船渡地区の問題点や今後の課題

 上記のごとく、この地区の拠点病院である県立大船渡病院はほとんど被害を受けず、また、ライフラインも早期に復旧したことがあげられる。もちろん、再開に向けての、同病院の職員、とくに外科医師の努力は大きかったと思われる。また、病床の確保に関しては岩手県立病院間での協力があったこと(県立中央、県立中部などの岩手県内陸部の病院が入院患者の転院の受け入れに積極的に関与)、また、救急などは全国からのサポートチームにより援助されているため、早期にがん医療を再開出来ている。一方で、病院職員の多くが(全職員のほぼ20%)直接あるいは間接的に震災津波による被害を受けており、患者のみならず職員に対しての精神的なサポートが必要である。また、一時的に内陸部の病院へ転院となった患者(上記)の今後の再受け入れの問題がある。患者の、今後に対しての不安(経済的)の訴えもある。抗がん薬治療は基本的に高額な治療であり、行政による関与が求められる。

岩手県立釜石病院

日時 平成23年4月21日(木)14:00~
場所 上記
参加者 遠藤 秀彦先生(県立釜石病院院長)、吉田 徹先生(県立釜石病院)、緩和ケア担当医師、化学療法センター看護師、化療センター薬剤師、石岡 千加史(東北大学腫瘍内科)、森 隆弘(東北大学がんセンター)

 平成23年4月21日(木)、県立釜石病院会議室で同地区のがん医療に関する意見交換会を行った。県立大船渡病院院での討議後に一般道を経由して、釜石市街の被災状況を確認後、県立釜石病院に13時45分頃に到着。約1時間、同会議室で下記の議事内容の意見交換を行った後、被災病棟を見学した。その後一般道および東北自動車道路を経て、午後7時頃に星陵地区に到着し解散した。

1. 釜石地区のがん医療の現況

県立釜石病院

 この地区の拠点病院である。また、高台にあるため津波による直接的な被害は無かったが、建築後既に30余年経ており、地震自体による被害(壁の崩落、床に亀裂?段差)のため、272床のうち26床のみが使用可能な状況となった(もともと、耐震構造の不備が指摘されていたため、本年4月より耐震補強工事が予定されていた。)。新病棟(26床)は約10年前に建設されたものであり、こちらの耐震性は問題なく、使用している(もともとは26床であるが、ベッドなどを搬入し、現在は40床として使用している)。また、下記のごとく、釜石地区の他の病院も甚大な被害を受けており、地区のすべてを合計しても震災前に比べて200床以上の減床となっている。このため、入院中の患者の多くは内陸部の県立病院などに移送した。県立釜石病院はこの地区住民のほとんどの癌治療に関与している。震災時に治療継続中(化学療法)であった患者さんは88名、その後、死亡/行方不明はそれぞれ3名出た。上記のように病院自体が被災(地震による)したため、休止していたが、4月4日から再開した。ほぼ順調に化学療法を継続し、現時点で震災前の約80%の実施状況である。(20%は他院への転院や、患者側の社会的状況から休止して経過観察希望)患者の多くが津波により被災しており、避難所暮らしの患者さんも多くいる。このため、施行に関しては、ライフラインの確認(特に水道の有無)やレジメンの再検討(ポートありのレジメンであれば、可能ならポート不要のレジメンへの変更など)を行っている。これに関しては、現在、同病院のスタッフが直接、避難所を巡回している(同地区のほぼ半数の避難所をカバー)ことも利点である(入院機能が著しく減少した分、医療スタッフを避難所巡回に回すことが可能となった。)。また、自治医大からの救急援助スタッフの派遣もプラスとなっている。また、市が同病院を含む無料バスサービスを運営しており、これも患者の通院手段として有益である。入院機能が著しく限定されているため、現在、手術は行っていない。

釜石地区の他の病院の状況

 県立大槌病院は全壊。のぞみ病院(旧釜石市民病院)は半減以下、特に緩和関係のofficeがあったが損害を受けた。給食施設も稼働していない。製鉄病院(60床)は以前と変わらず。在宅緩和ケアを行っていた開業医グループも被災し、活動は低下している。

2. 釜石地区の問題点や今後の課題

 上記のごとく、この地区の拠点病院である県立釜石病院は入院機能が著しく減少した。また、耐震構造自体の問題があるため、工事は長期化、本年9月にならないと入院は可能とならない。このため、長期的に入院が必要な処置を要する患者への対応が不能(手術は休止中)。このため、震災前より連携している県内の他の病院とのネットワークを更に拡大して対応(これまでは県立中部病院。今後は県立中央、岩手医科大学、他も適宜選択)。

 化学療法については釜石病院の医療スタッフの努力により、震災前に近い状況での再開が可能となった。しかし、上記のように在宅ケアに関する医療機関がダメージを受けて、活動が制限されているため、今後、緩和ケアに関しての負担の増加(同病院への入院の要望の増加)が懸念される。上記のように病床数が著しく制限される中での対応は難しい。また、大船渡地区と同様に、医療スタッフの多く(20?30%)が震災による被害を経験しており、患者同様に精神的なケアが必要である。患者の、今後に対しての不安(経済的)の訴えもある。抗がん薬治療は基本的に高額な治療であり、行政による関与が求められる。

3. 岩手県沿岸部(大船渡地区、釜石地区)への東北がんネットワーク、東北大学病院(腫瘍内科?東北大学がんセンター)の関与について

 上記のごとく、各地区の中核病院(県立大船渡病院、県立釜石病院)とも、各病院スタッフのご努力もあり、震災前に近い状態で抗がん薬治療を再開できている。これに関しては全国からの医療スタッフの派遣が特に救急分野での各病院の負担を軽減することにつながったこと、また、岩手県に特徴的な県立病院間のネットワークが以前より形成されており、これがスムーズな病院間の患者移送を可能にしたことがプラスであったと思われる。地区の中核病院自体が存続している点も大きい。

 このように石巻地区の状況とはかなり異なるため、同地区で検討しているような(医療)人的資源の提供に関しては、これら2地区での要望はあまり高くない、と判断された。

 一方、震災前よりの要望であった、東北地区全体のがん医療の均てん化に向けた連携に関しては、その必要性を共有出来た。今後とも各病院との連携を継続し、深化させることで一致した。

 また、避難所における癌患者の対応については、いずれの地区でも必要性は認識されたため、東北がんネットワークから、パンフレットを作成、配布することとなった。避難所への対応は各地区で異なる(上記参照)ため、大船渡地区では市防災対策課、釜石地区では県立釜石病院、を中心として対応してもらうこととした。

 いずれの地区でも、在宅緩和ケアに関しては明確な解決法は得られておらず、これは今後の課題である。これは石巻地区にも共通の課題であり、避難所の今後(仮設住宅や住民移転の問題)、開業医のネットワークの再構築の問題も絡んでくるため、地区(まち)の復興ビジョン全体とも関係し、行政を巻き込んだ検討が必要になるのではないだろうか。当面は避難所巡回のボランティア医師団にその役割を期待するほかない。緩和ケアや在宅医療に関係する学会の関与も期待される。

文責:森 隆弘

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