これまでの経歴と現在の仕事内容を教えてください。
2023年3月に東北文化学園大学理学療法学専攻を卒業し、同年4月から東北大学病院に入職しました。現在は、脳神経疾患や整形外科疾患の患者さんを中心にリハビリテーションを行っています。今後は新人教育ローテーションの一環で内部障がい系疾患（呼吸器疾患、代謝性疾患など）の患者さんを中心にリハビリテーションを行う予定です。
現在の仕事に就くきっかけ、資格を取るきっかけは。
15年間続けていた水泳の存在が大きいです。水泳競技を続ける中で、0.01秒を縮めるために「身体をどのように動かすことが良いのだろうか」という点に興味、疑問を持っていました。いろいろと調べているうちに、それを追究できる職業がまさに理学療法士であることを知り、目指すようになりました。
東北大学病院に入職した経緯を聞かせてください。
ひとことで言えば東北大学病院へ自分なりの恩返しがしたかったからです。実は2021年8月に脊髄腫瘍が見つかり、その年の10月に当院脳神経外科で手術を受けました。当時、私は大学3年生で、「まさか自分の脊髄に腫瘍があるなんて…」という大きな戸惑いがあったことを今でも鮮明に覚えています。そのような状況で、先生方や看護師さん、リハビリスタッフの方、家族など、さまざまな人に手術と入院生活を支えてもらったので、東北大学病院で働く姿を見せることが自分にできる恩返しだと考えて、入職を決意しました。当院で臨床実習を行ったこと、尊敬できる先輩スタッフが多数いたこと、ゼネラリストを目指す上で幅広い領域を経験できることなどの理由もありました。
さまざまな経験を重ねて、東北大学病院への思い入れが自分の中で強くなったことが最大の決め手です。当院で手術、入院をしていなければ、今の自分はいないと思っています。
どのような経験をされたか可能な範囲で教えてください。
術後に両下肢の深部感覚障害（*1）が出現し、歩けなくなりました。先生の手術前説明でそのリスクは聞いていたのですが、自分の想像を上回る症状の強さでした。術後早期は「もう理学療法士として働くことはできないし、諦めよう」とずっと考えていて、手術を受けたことを後悔する気持ちもありました。その後、リハビリで歩行練習やバランス練習を中心に取り組んで両下肢の力も徐々に入るようになり、リハビリの大切さを実感しました。
仕事で大切にしていること、やりがいを感じることは。
物事の「きっかけ」や理学療法を追究することを常に大切にしています。理学療法士を目指すきっかけは、水泳で「身体をどのように動かすことが良いのだろうか」という興味、疑問を持ったことであり、正解のない問いです。同じように患者さんも一人ひとり、病態や障がい像、性格、住環境などが異なり、理学療法における完璧な正解はありません。それぞれのケースに対し、自分の中で仮説を立て、最良の理学療法を組み立てていくことができる奥深さ、面白さが理学療法の最大の魅力です。この追究プロセスが功を奏して患者さんが回復し、それを喜んでいる患者さんやご家族の姿を目にすると、理学療法士としてのやりがいを感じます。
また、入院中お世話になった看護師さんに「あの時入院していた千田さんですよね？」と声をかけられた時、患者と看護師という関係から、患者さんを支える医療者同士という関係になったんだなと、とても感慨深かったです。
これから頑張っていきたいこと、目標は何ですか。
私は自分の病気を通じて、この病院で働くことなど、いろいろなきっかけを得ることができましたし、なにより、自分自身が入院していたからこそ、東北大学病院の素晴らしさを体感できました。今度は自分が患者さんにその素晴らしさを伝える番だと思っています。そのために、まずはゼネラリストとして、幅広い疾患の患者さんを診療できるようになることが直近の目標です。その先、臨床、研究、教育と何事もマルチにこなせる理学療法士になりたいです。認定理学療法士や専門理学療法士などの資格取得も目標にしています。今は自分の思いを形にしながら仕事をできているので、この思いは一生大切にしながら仕事を続けていきたいです。
趣味や得意なこと、続けていることはありますか？
休みの日はドライブ、食事、温泉、サイクリング、水泳の練習などに時間を使うことが多いです。温泉は、日本三名泉の草津温泉（群馬）、下呂温泉（岐阜）、有馬温泉（兵庫）を制覇しました。どこもお薦めの温泉地です。
*1 深部感覚障害：振動を感じることができる振動覚や四肢（両手足）がどんな位置をとっているか判断する位置感覚、関節がどちらの方向に動いたかを知る受動運動感覚、筋や腱などに強い圧迫を加えたときに感じられる深部痛などの感覚の知覚が難しくなる。
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