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気になる症状 すっきり診断

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気になる症状 すっきり診断 2022.10.03

高次脳機能障害と認知症

高次脳機能障害科 科長|鈴木匡子

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原因?症状を知って最適な治療を

高次脳機能障害とは

 脳卒中や頭部外傷などの後遺症として、手足が動かなくなるまひやしびれなどが残ることはよく知られています。

 しかし、手足が動くようになってよかったと喜んだのもつかの間、「以前より忘れっぽくなった」、「言葉がうまく出ない」などの症状に気付かれることがあります。人の脳のうち、まひや感覚障害に関連する部位はごく一部です。それ以外の脳は記憶、言語、注意など人間らしい機能に関わっています。そのような部位の脳が傷つくことによって「高次脳機能障害」が起きます。例えば、自分の言いたいことが話せない、聞いた言葉がよく分からないなどの言語の障害は、日常生活の大きな妨げとなります。注意が続かない、物事を段取りよく進められない、大切なことを思い出せないなど、損傷部位によってさまざまな高次脳機能障害がみられます。高次脳機能障害は脳卒中だけでなく、脳炎、脳腫瘍など脳の機能を低下させる全ての病気で起こりうる症状です。

高次脳機能障害の診療のながれ

 東北大学病院の高次脳機能障害科は全国でも珍しい高次脳機能障害を専門とする診療科です。当科では、生活の中でどんな障害があるかを丁寧にうかがってから、記憶、言語、視空間認知などの機能を調べ、原因となった脳の病気の状態についても検討します。そうすることによって、どのような高次脳機能障害があるのか、最適な治療や対応は何かを考えることができます。場合によってはソーシャルワーカーを介して福祉制度の利用を提案することもあります。これらの治療は神経内科や脳外科など原因疾患の治療をした診療科と協力して行いますので、そこからの紹介状が必要となります。

良くなる認知症を見のがさない

 認知症は、いろいろな高次脳機能障害のためにそれまで通りの社会生活が送れなくなった状態のことです。一般的には、その中でも中高年以降に発症し、徐々に進行する状態を指します。原因としては、アルツハイマー型認知症のように神経細胞が徐々に減って脳がやせてくる病気だけでなく、特発性正常圧水頭症や甲状腺機能低下症などのように治療で良くなる病気が1割ほどあるといわれています。また、治療により進行を遅らせることができる認知症もあります。

 ですから、認知症が疑われた場合は、それがどんな原因で起きているかを知ることが大切です。日常生活に支障をきたすような症状がある場合には、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。その上で、さらに詳しい検査が必要と言われた場合には、かかりつけ医からの紹介で、当科を含め専門家を受診されることをお勧めします。良くなる認知症を見逃さないために。

河北新報掲載:2018年6月15日
一部改訂:2022年10月3日

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鈴木 匡子(すずき きょうこ)

宮城県出身。山形大学医学部卒業。東北大学医学部脳疾患研究施設脳神経内科で神経内科学を学んだ後、メルボルン大学神経心理学教室に留学。東北大学高次機能障害学助手、リハビリテーション部講師を経て、2007年山形大学大学院医学系研究科高次脳機能障害学教授。同内科学第三講座神経学分野教授を経て、2017年より東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学教授。専門は神経内科学、神経心理学。

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