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仙台89ERS志村雄彦社長インタビュー(上)「一緒に進もう」と思ってもらえるチームに
仙台89ERS志村雄彦社長インタビュー(上)「一緒に進もう」と思ってもらえるチームに
TUHレポート 2022.08.16

仙台89ERS志村雄彦社長インタビュー(上)「一緒に進もう」と思ってもらえるチームに

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「てんかんをもつ人を、ひとりぼっちにしない」をスローガンに掲げ、毎年3月26日に世界中で行われているてんかん啓発キャンペーン「パープルデー」。国内の大学病院としては初めて診療科名を掲げて「てんかん科」が設立された東北大学病院では毎年、宮城でのパープルデーを主催してきました。2019年からは在仙プロバスケットボールチーム「仙台89ERS」にも趣旨に賛同いただき、公式戦ホームゲームでコラボレーションを実施しています。仙台89ERS代表取締役社長の志村雄彦さんに連携について伺いました。

――てんかん啓発キャンペーン「パープルデー」へのご賛同、ご協力ありがとうございます。パープルデーとの出合いについてお聞かせください。

パープルデーを広報するために東北大学病院の皆さんがいろいろな方々と連携されている中で、何か一緒にやれないかと仙台89ERSにも活動をご紹介いただいたのがきっかけです。
それとは別に、実は姉が小さい頃にてんかんを発症していて、私が物心ついたときにはすでに通院していました。発作の様子を見たことはなかったんですけど、両親からは聞いていたので、「てんかん」という名前は知っていましたし、私にとっては身近なものでした。パープルデー参画をきっかけに、中里信和先生(東北大学病院てんかん科科長、てんかんセンター長)から、てんかんについて知らなかったことをたくさん伺うことができました。

仙台89ERS社長の志村雄彦さん

――今年のパープルデーでは、選手たちが紫色のラバーバンドを着用したり、ブースター(ファン)も紫色の物を持参して応援に訪れたり、会場に啓発ブースを設けたりといった形でご協力いただきました。どのような思いで実施していただいたのでしょうか。

われわれ仙台89ERSは、誰もが生活を共にできる世界を目指してさまざまな取り組みを行っており、疾患を持っている方であっても、自分らしく生活できるようになることが重要だと考えています。
もちろん、病気を治すことは私たちの領域ではありません。興行を通して、てんかんについての理解を広めていくこと、てんかんはこういう症状でこうして対処すればいいんだよと伝えていくことで、少しでも手助けできるかなと思って協力させていただきました。

――パープルデーに参画したことで何か気付いたことはありましたか。

てんかんのことをよく知らない方にとっては、発作の様子はショッキングだと思います。落ち着いて対処すればいいことなのですが、地震が起きた時に冷静に対応するのがなかなか難しいのと同じように、突然起きてしまうと慌ててしまいますよね。すぐ病院に行かないといけないのか、お医者さんを呼ばなくちゃいけないのか、あるいはその場でどう対応すればいいのか、基礎知識がないと分からないと思います。
てんかんに限らず、知っていたから対応できたということはたくさんあると思います。今でしたら新型コロナウイルスがそうですよね。多種多様な情報が氾濫していて、どれが正確な情報か分からない中でも、正しいものを選び取っていかなければいけません。
特に私たちプロスポーツは発信力や影響力があると自覚していますので、本当に正しいものを正しく皆さんに伝えて、広めていくことが仕事の一つです。東北大学病院の皆さんとのパープルデーの取り組みと同様に、ほかのテーマに関しても活動をご一緒しながら正しい知識を得て、それを発信していければと思っています。

仙台89ERS球団事務所とゼビオアリーナ

――今後はどのようなことに挑戦していきたいとお考えですか。

試合会場でいろいろと啓発活動を行う中で、選手たちにも活動の趣旨を伝えて情報を届けてはいますが、彼らはやはり試合がメインで競技に集中している時間が多く、まだ説明が不足していると感じています。もう少し踏み込んで、シーズンオフの期間などに選手と一緒に病院へ伺って、先生から直接お話を頂く機会を設けるようなことができればと思っています。今はまだ難しいですが、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いて、職員の方や入院されている方とのコミュニケーションが取れるタイミングになったら、そういったことも行っていきたいですね。
以前は東北大学病院の院内学級を訪問したり、こども病院に行ったりという活動もしていましたが、そういう機会は選手たちにとっても大変重要です。当たり前のようにバスケットボールをプレーしていますが、それが決して当たり前のことではないんだとあらためて感じてもらえれば。
また、地域にはいろんな方がいて、誰もが観戦に来ることのできる環境を整備していく必要もあると思っています。私たちの興行は音や光の演出で会場を盛り上げていますが、視覚や聴覚などに感覚過敏の特性がある発達障がいの子どもたちのために、今年3月、ホーム会場のゼビオアリーナに「センサリールーム」を設けるという初の試みを行いました。大きな音や歓声、まぶしい光が苦手な子どもでも安心して観戦できる環境を用意し、家族とともに試合を楽しんでいただきました。

センサリールームで試合を楽しむご家族(写真提供:仙台89ERS)

同じようにてんかんやほかの疾患のある方も、車いすの方も、妊娠されている方も、小さなお子さんを連れている方も安心して観戦できる。そういう環境をつくっていかなければいけないと思っています。

――SDGsの取り組みも積極的に行われていますが、そこにもやはりスポーツエンターテインメントが果たすべき役割があるとお考えでしょうか。

そうですね。私たちはただバスケットボールをやっていればいいわけではなく、競技が強くなればそれでいいというわけでもありません。「仙台」という名前を使わせていただいて、地域の代表としてプレーさせていただいていると思っていますので、そういった意味でも、地域に住んでいる方、地域に愛着のある方が誰でもが来て、楽しめる。そういうクラブ、そういうアリーナにしていきたいです。
ただ、SDGsと一口に言ってもすごく広い範囲ですよね。定型文的に言えば「社会の課題解決に取り組みます」ということですが、それって一体何だろうと。突き詰めて考えれば、私たちができるのは、やはり興行をしっかりと開催して、そこに多くの方に来てもらって、喜びを感じてもらうことだと思うんです。
そのためにはまず、それぞれにいろんな状況があるということを知らなくてはいけません。試合を見たいけど見られない方がいる。その障壁には金銭的なもの、身体的なもの、精神的なもの、いろいろあると思います。そういうものを少しずつ取り除き、間口を広げることで、どんな方でも会場に来て楽しめる社会にしていきたい。例え会場には来られなかったとしても、試合を見られる状況を用意したり、逆に私たちが会いに行ったりすればいいんですよね。
そういうことを通して、「仙台89ERSがあるから、一緒に前に進もう」と思ってもらえるチームをつくり上げていきたいです。

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志村 雄彦(しむら たけひこ)

1983年宮城県生まれ。仙台高校でU18代表に選出、高校と慶應義塾大学のバスケットボールチームで日本一を経験。卒業後、東芝や仙台89ERS等で活躍。2018年に現役を引退、仙台89ERSのゼネラルマネージャーに就任、2020年から同代表取締役社長を務める。

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